リップロールという現象

リップロールという発声練習方法がある。 唇を閉じた状態で息を吐いて、唇をプルプルと振動させるのである。 リップロールは、唇周辺に力が入っているとできない。 そこで、唇周辺の力を抜く練習としてこれが用いられる。 私は以前、発表会で歌った時、声楽…

脱力と付加

緊張と弛緩のトレーニングをやってみた。 目標は、緊張している部分と弛緩している部分の両方を、同時に感じること。 それによって、バランスという考え方を実感してみる。 まずは、100%の弛緩から。 ターゲットは、首から上のみとした。 声量も要らない、…

緊張と弛緩のミックス

アアアアアアアアアアアー (♪ドレミファソファミレドー) という定番の発声スケールをするときに、 下がった時のドの音程が、若干低くなる癖がある。 自分ではそれに気づかない。 たとえそのように指摘されたとしても、 自分の耳がそれでよしと補正している…

習い方あるいは教え方

書いていて思うのだが、発声の習い方は、発声の教え方でもあるということ。 それは、習うことと教えることが同じことを意味することでもある。 「習う」とは、自分自身に「教える」ことではないだろうか。 ならば、誰かに教えて貰おうといういう気持ちがある…

区別の次には

「響き」と「鳴り」について区別をしてみたが、 理想的には、鳴りの効率を最大限にして、響きを最大限すること。 つまり、欲張って両方を手に入れること。 良くないのは、鳴りの効率がいい場合につい楽をして、響きをおろそかになってしまうことと、 響きが…

響きと鳴りの区別

大きな声が出ている状態について、「鳴っている」とか「響いている」と言う言葉が使われる。 どちらかと言えば、「鳴る」は「響く」の中に含まれているような感じがあるのだが、 結果としては似たような意味であっても、成り立ちは違うのではないだろうかと…

喉を閉じない意識

発声練習で大事なのは、段階を踏んで理解していくことではないかと思う。 長期間の練習を重ねて、何となく以前よりも上手くなっきたというのでは心もとない。 段階を踏むとは、その小さなステップごとの差異に気づくことであろう。 たとえば、前回のミックス…

セパレートなミックスボイス

ミックスボイスという言葉は、頭で理解するために模式化された一つの概念である。 だから、2種類の声を混ぜるというイメージを持ってしまうのは間違いのように思う。 そこには、「混ぜる」という意味は含まれていないと理解している。 ”頭声の響きと胸声の…

スケールは難しい

発声練習と言えば、ピアノに合わせてスケールを母音で歌うというのが定番だろう。 合唱団で、歌う前にウォーミングアップとしてやるのならばそれもいい。 直前にピアノで音を出してそれに合わせるというのは、 決まったテンポと正しいピッチを提示して、みん…

痰が絡む

喉に痰が絡まった状態が長く続いている。 風邪と違って、喉の炎症や痛みは無い。 声帯に痰が付くことで重くなるためか、声が低くなる。 ゴロゴロと声がふらつく。 突然、音量が増えたり、小さくなったり、裏返ったり、かすれたりと 声のコントロールが効かな…

組み立て説明書

例えば、「声の中に地声の成分が強すぎるから、もっと喉を緩めて」と言われたとする。 しかし、喉を締めているという自覚のない人が、喉を緩めることは不可能である。 次に、「胸の辺りの響きをもっと強くして」と言われたとする。 もしかしたら、私の中では…

仰向けで歌う

前回に続いて、仰向けで歌ってみる。 たしかに、立って歌うときよりも声は伸びないし、高音も苦しい。 しかし、その後で立って歌ってみると、とても楽に声が出せていることがわかる。 一般的に発声指導というものは、こうすると声が良く出るとか、 高音が出…

ライオンの発声

先日、Eテレのクラッシック番組で、「テノールの魅力」を紹介していた。 どうやったら、オペラ歌手のような声が出せるのか? そんな素人の疑問に、テノール歌手の笛田博昭さんは、 ライオンの発声法がお手本になっていますと答えていた。 動物園でのライオン…

体感覚よりも聴覚を

難しそうな資料をいろいろと並べてみたが、 単語は難しくても、言っていることはとても簡単なことだ。 ある意味、「声を後ろに回して」とか、「音を眉間に集めて」と言ったことの方が、 言っていることは簡単でも、複雑で難しいことを言っていると思う。 も…

一つの結論として

「ア」を発声したときのスペクトラム波形例を、ネット上で探してみた。 125Hzが最低周波数になっているので、これが基本周波数ということになる。 この125Hzの後に、250、375と続く倍音成分の小さな山の群れが出てくる。 ピークを250Hzとした第1フォルマント…

歌手フォルマントの作り方

「3kHzというとかなり高い響きのはずだが、いくら高い響きを意識しても、これが全く出ない。 むしろ、基本波よりも低い倍音を出すようなイメージで発声したときの方が、 3kHzが出ているという感じがする」 少し前の記事の最後に、このようなことを書いていた…

声帯は弦の振動ではない

声のピッチは、声帯の開閉によって作り出された周波数によって決まるわけだが、 その開閉を生み出しているのは、ベルヌーイ力と呼ばれる息のスピードである。 息の量とスピード(声門体積速度)と、声帯の厚さ(単位あたりの重さ)がそこに関係している。 よ…

肺は共鳴?反共鳴?

”喉頭音源を完全に独立な系とみなしてきた。だが、これは完全に正しいというわけではない。” こう書いているのは、バイブル的存在である、スンドベリの「歌声の科学」。 ”調音パラメータの変化は、声道の形状すなわちフォルマント周波数にだけ影響すると考え…

基本周波数の役割

スペクトルグラフは、発声においてとても参考になるものだが、 わたしたちの聴いている音と完全に一致しているわけではない。 P.ラディフォギッドは、人の聴覚についてこう述べている。 ”反復波形を有する複合音の高さの知覚は、最大振幅をもつ成分の周波…

フォルマントの山と谷

仮に、基本周波数100Hzで作られた「ɔ」に相当する合成母音を発生させたとする。 その音声スペクトラムは、100の整数倍に高次パルスがヒゲのように立ち並ぶ。 そのパルスの頂点をなだらかに結んでいくと、大きな山と谷が現れる。 この山がフォルマントである…

3000Hzとアプリ

極論を言えば、発声というものを教えたり、教わったりすることはできない。 たとえば、耳を動かせる人はたまにいる。 でも、どうすれば耳が動かせるようになるのかということを説明できる人はいない。 解剖学者だってできないであろう。 言えるのは、耳を動…

強く、柔らかく、美しく

「強く、柔らかく、きれいな声」と言うのは、私の思う発声の理想像なのだが、 「強く」とは、音量の大きさだけではなく、 芯のある、地声の混ざった、低音の響きがある意味である。 それには、息から声への変換効率が良くなければいけない。 そして、響きの…

力ではなく感覚で

「何かやろうとするとき、力でなく感覚でやるように考える」 これは名言だと思う。 そして、これがボイトレの大前提であることを忘れてはいけない。 たとえば、フースラーの言うアンザッツもそのように考える。 声の当てる場所を前歯とか眉間、頭頂と指示さ…

音源フィルタ理論からも

音源フィルタ理論というものがある。 人工的に合成音声を作るための理論であり、 音声というものを、喉頭音源と呼ばれる入力信号に繋がる声道フィルタと、 口唇からの放射特性フィルタの直列接続としてとらえる理論である。 さらに書くと、 喉頭音源の周波数…

ウォーミングアップの目的

発声にもウォーミングアップという概念がある。 いきなりフルボイスで声を出さずに、徐々に喉をあたためてから歌うようにしないさいという意味である。 おそらく誰もが、そのような実感は持っているであろう。 「歌の練習を始めてみたけれど、いっこうに調子…

音程が上がるとき

どのようにして音程が上がるのかを考えてみる。 まず声には、2種類の発声様式がある。 それが、「地声」と「裏声」。 それぞれの発声のメカニズムは異なっていて、これが「声区」の違いを生む。 この声区の境界を、「喚声点」と呼んでいる。 「ベルカント発…

後ろを回す2 後方スライド

前回記事では、声を後ろに回すということは、喉頭を下げるということと同じと書いた。 しかし、喉頭の動きは、鎖骨に向かって引っ張るのと、耳の後ろに向かって引っ張ること以外に、 背骨側に向かって引っ張る筋肉もある。(輪状咽頭筋) これによって、喉頭…

後ろを回すという意味

「声を後ろに回す」という言葉がある。 発声レッスンの中でも、これはおそらくF難度級の技だと思っている人が多いのではないか。 ただ後ろを回せと言われても、何をどうすればそうなるのか誰も分からない。 そのヒントになるのが、「あくびのように」である…

指導は絶対ではない

たとえば、ミックスボイスを練習するときには、 ファルセットを出して、そこからできるだけ下まで降ろすようにと書かれていることが多い。 また、母音発声をするときには、「ウ、オ、ア、エ、イ」とか「イ、エ、ア、オ、ウ」と練習するのが普通である。 他に…

ミックスボイスの意識

ミックスボイスを習得することが、声楽発声の目標と言えるだろう。 それは、ミックスボイスが楽器の音色に近いからではないだろうか。 ただ音を発生させるだけでは楽器とは呼べない。 楽器は、全音階において一定の音色を保ち、 音量を自在に操ることができ…