ライオンの発声

先日、Eテレのクラッシック番組で、「テノールの魅力」を紹介していた。

どうやったら、オペラ歌手のような声が出せるのか?

そんな素人の疑問に、テノール歌手の笛田博昭さんは、

ライオンの発声法がお手本になっていますと答えていた。

動物園でのライオンの映像が流される。

寝そべったライオンが遠吠えをすると、横隔膜を中心にして全身が弾むように揺れていた。

笛田さんが心掛けていること、喉で大きな声を出すのではなく、全身で大きな響きを作ることらしい。

遠吠えと連動するように波打つお腹に、これほど動くものなのかと驚かされる。

 

他にも、ゲストで来られていた医師で芸大の非常勤講師もされている三枝英人氏が、

背骨を使ってしっかりと頭蓋骨を支えることで、

顎から吊るされている喉頭とその中にある声帯が自由に解放されると話していた。

特に、最新の発声法や、目からウロコな話があったわけでは無い。

いかにも基本に忠実な、王道の発声法であった。

以前なら、「得るもの無し」とすべきところだったが、今はその重要性がよくわかる。

王道から攻めるしか道はない。

ネット上には、たくさんの発声コラムが溢れている。

それらは自分の間違った思い込みを修正してくれるきっかけにはなるだろうが、

本当に自分に合った発声指導をしてくれるわけではない。

あくまでも一般論としてのアドバイスである。

発声の癖は、人それぞれ違う。

結局、ライオンの発声法から得るものは、自分で見つけなくてはいけない。

 

ためしに、仰向けに寝転んで発声してみた。

腹式呼吸を実感するのによく使われるやり方だ。

四つん這いになってもそうだが、お腹周辺の筋肉が緩んだ状態を簡単に作ることができる。

寝転ぶことで、全身の筋肉が弛緩してくれるのが実感できる。

腹式呼吸の確認ならそれでも良いが、声を出してみると、支えが抜かれてしまった感じで、

力らが入らない。

しかし、三枝氏の言う頭蓋骨の安定は、床に支えられることでできているように思う。

両氏が言っていることが一度にできる状態にあるのかもしれない。

ライオンは四つ這いだが、このような状態でも横隔膜がダイナミックに使えるということだろう。

わたしが、支えが無いと感じたのは、もしかしたら不必要な支えに頼っていたのかもしれない。

直立姿勢で発声するのは、支えを作りやすいとは思うが、

ライオンは直立していない。

直立しなくても支えは作れるのかもしれない。