球状の声を目指す

前記事に書いたバーチャルサラウンドの話は、

声が後ろから聴こえてくるといっても、

それは必ずしも後に音源があるわけではないということ。

「声を自分の身体から離す」という言い方があるが、

素人は、声がその人の口から出ていることがすぐにわかるが、

プロの歌手は、声がどこから聴こえてくるのか分からない。

スマホでもそうだろう。

着信音をサラウンド効果にすると、

スマホとは離れたところから音が聞こえてくるような錯覚を起こす。

 

そう考えると発声練習でも、背中や首の後ろの筋肉を意識するのではなく、

背中を周ってくるような音色、周波数成分に意識を向けること、

つまり耳に意識を向ける練習が必要になるのではないだろうか。

マイクを使ったボーカル系の音楽をよく聴いている人は、

クラッシックのサラウンド的な音色には耳が慣れていないと思う。

本当に声楽の発声をしたい人は、単にマイク無しで大きな声が出るとか、

高音が力強く出せるというようなところにだけ注目せず、

マイクを使わない、アコースティックなサラウンド音というものに、

もっと注意を向けることが大事ではないか。

 

自分の声そのもの、音色だけに注目してみる。

声量とか、高音が出る出ないなど気にしない。

自分の声が、どんな形状をしているのか想像してみる。

理想的な声が、きれいな球体であるとすれば、

自分の喉から小さな真ん丸の球体が、

そのまま形を変えずに大きく広がっていくことを目標としている。

声の球体は音場であって、それに自分が包み込まれている。

自分は音場の中にいてそれをモニタしている。

そうやってモニタしてみると、とても理想的な球体になっているとは思えない。

表面がギザギザであったり、真球でなく歪んでいたり、

球が不安定で膨らんだり萎んだり揺らいでいたりするだろう。

それをバーチャルサラウンドの設計技師のように、

音場の形状を整えていく。

そのやり方?

そんなものは無いだろう。

ただ、真球に近くなるように声を出すだけだ。

そこに理論は無い。

試行錯誤、フィードバック手法がそこにあるだけだろう。

ゆっくり時間を掛ければ、必ず球体に近づいていくはずだ。

近づいた時には、必ずその時の感覚を覚えておく。

おそらくそれは、指導者から言われていることと一致しているはずである。