自分の声を聴く努力

前記事の最後に、「自分の声」を聴くということを書いた。

それは、これまで自分の声が正しく聴けていなかったことでもある。

正しい声の聴き方とは、自分の内部の骨伝導を無視して、

耳の鼓膜だけで聴くことだと思う。

骨伝導を含めた声の方がより良く聞こえるけれども、

あえてそれにマスキングをかけて、客観的な空気の振動だけを、

空間の中から広い出して聴くことだと思う。

 

発声とは、声帯や共鳴腔だけで成り立っているものではない。

耳からのフィードバックとループさせながら調音を行っている。

つまり耳も、発声システムの一部だと言えるだろう。

たとえば音程がフラット傾向にある人は、

自分の声が客観的に聴けていない可能性がある。

もっと、空間の音を聴くことに注意を払うべきだろう。

自分の声を録音した音が、違和感なく聴こえるくらいに、

普段から、自分の声を正しく聴く意識を持つことだろう。

 

たとえば、練習の時に、先生が見本で出した声の後に続いて声を出す場合、

当然、先生の声を真似ているわけだから、似た声が出ているはずだろう。

その時は、似た声を出せていると思って満足していても、

後で家に帰って録音を聴いてみると、

先生の声はいつもと同じなのに、自分の声だけが違って聞こえる。

他の人の声も、いつもと変わらない。

自分の声だけが、自分で思っている声と違っている。

そして、それは悪い方向に違っている。

決して、録音の方が良い声に聞こえることはない。

声を出すことばかりに一生懸命になり過ぎて、

客観的に聴こうとする努力を忘れているのだと思う。