良い声とは何か?

発声練習とは何か?

良い声を作り出す練習。

では、良い声とは何か?

以前は、美しく心地良い声と書いていた。

ならば、「ア」と「イ」ではどちらが美しく心地良い音だろうか?

「ア」の音からは、まろやかで甘美な柔らかさが感じられ、

「イ」の音からは、鋭い透明感のある煌めきが感じられる。

ちなみに「ウ」には、懐かしさ、優しさが感じられ、

「エ」からは、コントロールされた抑制のイメージが浮かび、

「オ」からは、穏やかな安定が感じられる。

 

感じるイメージが人それぞれのように、

良い声も人それぞれなのではないか。

自分が良い声だと思って出している声も、

もしかしたら聴く人にとっては違和感のある声なのかもしれない。

つまり、自分の感覚で良い声を判断してはいけないということから、

発声練習が始まるのだと考えてみる。

 

今、自分やっている練習方法は、

「ウ」の音を、思いっきり後ろに引いた声にする。

次に「オ」を思いっきり、下に向けた声にする。

「ア」は前に出し、「エ」は両横に向かって、

そして「イ」は天井に向けて。

それぞれに特化した声を出してから、

次は、「ウ」のと方向性を残したまま「オ」の声を加える。

こうやってフースラーのアンザッツのように、

継ぎ足しながら全方向の響きの要素を残した「イ」に到達させてみる。

 

こう考えると良い声とは、

甘美で柔らかく鋭い透明感があって優しく抑制された穏やかな声、

ということになる。

つまり混ざり合った声、ブレンドされた声。

逆に下手な声とは、単一の声、ブレンド量が少ない声となる。

発声に限って言えば、シングルモルトウイスキーではダメなのだろう。

いくら単一の声を極めようと努力しても、足りない声がある以上、

良い声にはならないと思う。

 

発声が初心者にとって難しいのは、

自分の声の足りない音色の存在に気づけないことではないか。

他人の声との比較、プロ歌手の声との比較が大事だと思う。