歌手フォルマントの作り方

3kHzというとかなり高い響きのはずだが、いくら高い響きを意識しても、これが全く出ない。

むしろ、基本波よりも低い倍音を出すようなイメージで発声したときの方が、

3kHzが出ているという感じがする」

 

少し前の記事の最後に、このようなことを書いていた。

スマホのアプリを使って、歌手フォルマントである3kHzを強化してみた時の感想である。

最初に、私の持っていたイメージとは、

「基本波の8倍音を強く出すのだから、さらに高い響きを強調すべきだろう」であった。

しかし、スンドベリはこのような文章を書いている。

 

喉頭の下降により喉頭室が拡大すれば、第4フォルマント周波数は、

成人男性での典型的値である3.5kHzから2.8kHzあたりへと下降する”

 

これは、わたしが「低い倍音を出すような感じで」と言う感覚と重なるところがある。

4フォルマントの周波数を下げること、つまり喉頭を下げ広げることが、

歌手フォルマントを作り出す秘訣だったのだろう。

 

さらに説明は続く、

4フォルマント周波数は、喉頭菅の大きさに強く依存する。

それは、咽頭よりも喉頭菅の方が十分に狭くなければならないということだ。

つまり、ラッパ形状である。

そして、高い声を出そうとすると、喉頭菅も広がるという。

喉頭菅が広がれば、その上にある咽頭はさらに広げなければいけないことになる。

これが、「喉を開けて」と表現されることの本質ではないか。

 

高い声を出すときには、無意識に喉頭が上がるものだ。

プロ歌手は、そこを意識的に喉頭を下降させていると言う。

スンドベリは、そのことで発声指導の問題点にまで言及している。

 

”教師が直接的な言葉を用いず、例えば、音を「前に出せ」、

「鼻内で鳴らせ」、「鋼」を音の中に保て、音を「覆われたように」

などの暗示的な言葉を用いて指導するならば、

この再学習に必要と思われる時間は、さらに非常に長くなるであろう。

歌声のスペクトルを表示するなどの視覚的補助は、

教師がいわんとする音の特徴の性格な理解に役立つ手段となる”

 

歌手フォルマント=第4フォルマント=8倍音3000Hz付近とは、

人間の、聴覚感度が良い音域であり、オーケストラが持たない音域であるらしい。

他にも、利点があり、

低い周波数帯は、歌手の全方向から放射される。

高い周波数帯は、前に向かって放射される。

ということも、スンドベリは書いている。

 

たしかに、そば鳴りではなく客席まで届く声を「前に出せ」と表現することは、辻褄が合っている。

しかし、どうやったら声が前に出るのか?なぜ声が前に飛ばないのか?

ということは、それだけでは分からない。