後ろを回す2 後方スライド
前回記事では、声を後ろに回すということは、喉頭を下げるということと同じと書いた。
しかし、喉頭の動きは、鎖骨に向かって引っ張るのと、耳の後ろに向かって引っ張ること以外に、
背骨側に向かって引っ張る筋肉もある。(輪状咽頭筋)
これによって、喉頭が後ろに引けると食道が圧迫されて、代わり気道が広くなる。
逆に、物を飲み込むときには、輪状咽頭筋が緩み食道が広がる。
この筋肉についてもう少し調べてみると、後ろに引っ張ることで喉頭の位置が安定するという。
歌うことによって喉頭が上がるのを、下に引っ張ることで戻すのではなく、
喉頭を後ろ側に固定しておくことで、そもそも上がらなくすることができるらしい。
また、輪状軟骨が後ろにスライドするため、甲状軟骨から離れて声帯が伸びることにもつながる。
それによって、喉の疲労も抑えることができる。そして喉締め声を防ぐ。
練習では、うなじに手を当ててここが振動するように声を出すというのがそれだ。
声に強さと深みをもたらすと言う。
そしてこの筋肉は、予想以上にしっかりした筋肉だと書いてある。
この筋肉は、喉頭を下に引っ張る筋肉と似た働きをするのだが、
自分が思っている以上に、重要な役割を果たしていることが分かった。
壁に後頭部をくっつけて発声する指導があるが、それがこの筋肉を鍛えることになるらしい。
高音に向かうにつれて、喉仏が前傾して声帯を引っ張るわけだが、
それも限界に近づくと、「喉の後ろがもう一つ開く感じで奥に広げて」と指導者は言う。
このもう一つが、輪状咽頭筋を引くということではないか。
これまでの解釈は、より響きを得るために後ろの空間を広げて、そこに息を通すと理解していた。
でもそうではなく、声帯の固定端が後ろにスライドするということで、
声帯を引っ張る筋肉がもう一つ残っていると考えるべきであろう。