喉の後ろを開ける

例えば先生が、「喉の後ろを開けて」と言ったとします。

これを、「喉を開けろ」と命令系で受け取ってしまっては、

いつまで練習しても、決して喉は開かないと思います。

脳は、「どうやって開くの?」と混乱するだけではないでしょうか。

そのとき、喉が開いた時の音色が正しくイメージできる人ならば、

効果はあるでしょう。

でも、その音色が正しくイメージできていない人には無理です。

では、こう考えてみてはどうでしょう。

 

「喉の後ろが開くことで、先生のような良い声が出る」のではなく、

「先生のような良い声が出ているときは、喉の後ろが開いているように感じる」

と考えてみるのです。

つまり、先生はそういう状態であるからそう説明しているのだということです。

このように、頭の中の因果関係を逆転させてみます。

すると脳は、自分の喉の後ろが開いているような感覚を探し始めます。

これは試行錯誤です。

喉を開けようとするのではなく、思考錯誤で開いた瞬間を見過ごさないように感じようと、

意識が喉の後ろに集中します。

10分以上それを続けていると、偶然その瞬間が訪れる時があります。

意識してそうしたわけではなく、まさに偶然です。

その瞬間、声の発生源が声帯ではなく、喉の後ろで鳴っているように聞こえます。

まさに、喉の後ろに小さな空洞が現れ、そこに息が流れ込んで溜まっている感覚、

その部分から音が鳴っている感覚、エアポケットが開く感覚が得られました。