離隔をとる

最近、(喉を)開けるという言葉を使わないようにしている。

代わりに「離隔」という概念を利用している。

元々、電気用語で「離隔」というのは、高圧電線から距離を置くことを差す。

高圧線に近づくと、触らなくても放電によって感電することがある。

だから安全のために「離隔をとる」という意味で使われているものだ。

 

二つのものの距離を磁石の反発力のように遠ざけるイメージ。

これまでの「喉を開ける」という行為は、舌根を下げる動作と、口の奥の咽頭後壁を引く二つの動作を意味していた。

これを、一つの動作として意識するために、「舌根と後壁の離隔をとる」という考え方にする。

ピンポン玉を飲み込むようにというイメージも同じだが、

それではピンポン玉が邪魔になり、そこに空いた空間が意識しにくいのが欠点。

そこで、舌根と後壁の中間にある空間に意識を持って、

その空間が反発するように広がるイメージを持つ。

これまで舌根を下げるときには、舌根を喉の深く下に隠す。

舌根を飲み込むようなイメージを使って動かしてきた。

これによって喉は下がるのだが、軟口蓋辺りまでも一緒に引きずり込まれてしまう、

悪いイメージもついてしまっていた。

そのため、舌根を下げると低い響きは強くなるが、高い響きが消えてしまうという欠点があった。

喉を下げることと、軟口蓋や後壁を持ち上げることを別々に練習していると、

ますます両方が合わせることが難しくなる。

 

もう一つ。要は咽頭腔を大きく確保することだが、

舌根を下げるというよりも、厚みのある舌根を薄く延ばすというイメージを利用することもできる。

ちょうど手打ちうどんの「小さなのし棒」を使って、舌根を薄く延ばすように押し付けることで、空間を作るのである。咽頭の後壁も同様に薄く延ばす。

それを、舌根と後壁の相互反発作用のイメージを利用して行うことで両者は一連化するのではないか。

反発方向のベクトルは、咽頭腔の中心から、斜め前下と斜め上後が調子いい。

簡単に言えば、喉仏が前と下に向かい、うなじが後ろと上に向かう方向。

それが外側から力が加わってそうするのではなく、内部の中心から広がるようにするため、

肩や首や胸やお腹に背中、どこにも力を入れずに、全身脱力状態になれるというメリットもある。

このような状態が、一番お腹の可動域が広がる。

こうすることでお腹は必要な分だけ動き、背中は必要なときに自由勝手に動くことができるだろう。